タイ税務改正動向:海外事業者によるタイ国内の個人向け電子サービスへのVAT課税

2020年6月、タイ内閣は、タイ国内向けに電子サービス(インターネットを通じた映画・音楽等のコンテンツ、オンラインゲーム配信等)を提供する海外事業者に、VAT徴収・納税義務を課す税法改正案を閣議決定しました。

    現在 は海外事業者がタイ国内の「VAT登録をしていない顧客(主に個人)」向けに電子サービスを提供する場合のVAT徴収・納税義務が明確でないことから、電子サービス提供に対するVATの課税は事実上行われていませんでした。一方でタイ国内の事業者がタイ国内の個人向けに電子サービスを提供する場合は、VAT事業収入としてサービス代金にVATを付加して徴収、VAT申告による納税義務があり、海外事業者と国内事業者で不公平が生じていました。今回の改正は、海外事業者からの税収確保と、国内・海外事業者の不公平の是正を目的としていると思われます。

改正案の概要は以下の通りです。

  • VAT税法上、インターネットを通じた映画・音楽等のコンテンツ、オンラインゲーム配信等の「電子サービス」は、「物品販売」ではなく、「サービスの提供」として定義される。
  • タイ国内で電子サービス事業を行う海外事業者は、タイ国内での年間売上が1.8百万バーツを超える場合、VAT登録を行い、サービス代金にVATを付加して徴収し、VAT申告にて納税を行う義務を負う。(国内事業者と同じ要件となる)
  • 海外事業者が海外のデジタルプラットフォーム(電子サービスの配信サイト等)を使用してタイ国内顧客へサービス提供をする場合には、デジタルプラットフォームの所有者がVAT登録とVAT徴収・納付の義務を負う。
  • 海外事業者がVAT登録をした場合でも、サービス利用料に関するタイVAT税法上の「T ax invoice」の発行はできない。
  • 海外事業者は、仮にその事業に関連してタイ国内で支出したinput VAT(仕入れVAT)がある場合でも、VAT申告での控除は認められない。(顧客より徴収したoutput VAT(売上VAT)をそのまま税務当局に納税する形になる)
  • 海外事業者のVAT登録とVAT申告はインターネット経由で手続きが可能

    改正案は、今後タイ国会での承認手続きを経て施行される予定です。また歳入局より施行に当たっての運用の詳細や罰則を定める通達が発行される予定です。

    なお、現在、海外事業者がタイ国内の「VAT登録をしている顧客(主に法人事業者)」向けに電子サービスを提供する場合は、リバースチャージ方式(サービスの利用者が「サービス輸入にかかるVAT申告書(PP36)にて申告納税する方式)にてVAT課税が行われています。当該改正案では、VAT登録をしている顧客に対する電子サービス提供に関する言及は無く、引き続きサービスを利用した法人側でPP36により申告納税が必要となる見込みです。

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(2020年7月作成)

 

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