税務論点解説 :e-Tax invoice/receipt制度

タイでは、VAT申告にインボイス方式(税法上の要件を満たす「タックスインボイス」を集計して納税額を算定する方式)が取られており、また原則として「タックスインボイス」は紙ベースの原本を利用することが求められ、VAT登録事業者の大きな事務負担となっています。
歳入局は、このような事務負担の軽減と、タイ政府の電子政府化・民間セクターでの電子商取引推進の一環として、2012年より一定の要件を満たすことにより「タックスインボイス」を電子化することを認める「e-Tax invoice/receipt制度」を導入し、適用拡大に努めています。

 歳入局の「e-Tax invoice/receiptの導入、運用、保管に関する規則」によると、e-Tax invoice/receiptの発行は、「電子署名方式」と「Eメール方式」が認められています。
  それぞれの方式のポイントは以下の通りです。

 

電子署名方式

Eメール方式

概要

電子署名により原本性保持、改ざん防止が担保された電子データによるtax invoice。比較的大規模事業者の利用を想定。

一定の要件を満たすPDFデータによるTax invoice。Eメールでの送付を想定している。比較的小規模事業者の利用を想定。

データ形式

XML形式その他のデータ形式が利用可能

PDF/A-3基準に準拠したPDFデータ形式のみ

導入条件

歳入局の定める要件を満たすソフトウェアを利用すること。

過去に納税漏れ、tax invoiceの偽造や違法な発行をしていない。

- 2015年以降の各会計期間の売上が30百万バーツ以下

- 左記、電子署名方式での e-Tax invoice/ receiptの利用申請 をしていない

- 過去に納税漏れ、tax invoiceの 偽造や違法な発行をしていない。

電子化可能な税務
書類

- Tax invoice/receipt

- 簡易Tax invoice (一般消費者 向けの小売業者等で発行が容認される一部記載事項が省略されたTax invoice)

- Debit note

- Credit note

- 税法上印紙貼付が要求されるreceipt控え

- Tax invoice/receipt

- Debit note

- Credit note

利用申請方法

歳入局ウェブサイトより電子署名形式の利用申請を行う。また認証局より電子署名を入手する。

歳入局ウェブサイトより電子署名形式の利用申請を行う。

e-Tax invoice/
receipt の送付、提出方法

- 取引先へE-mailその他のあらかじめ合意した方法で送付する。紙ベースの原紙の発行要求がある場合は原紙に「電子データで作成され、歳入局へ送付済み」の文言を記載する。

- 発行月の翌月15日までに以下のいずれかの方法で歳入局へコピーデータを提出する。

A. 歳入局ホストシステムと直接   接続しデータ提出

B. 歳入局認可のe-Tax invoice/ receiptサービス事業者を通じて提出

C. 歳入局のウェブサイトへのアップロード

- 取引先へE-mail添付にて送付する。

- 同時に歳入局へもコピーデータを送付、歳入局よりタイム スタンプ(電子データの存在証明、以後の非改ざん証明)を取得する。

  E-Tax invoiceの採用により、業務の効率化(書類の印刷・郵送による手間の削減)、郵送費の節約、書類の保管スペース節減、データ検索が容易になる等の多くのメリットが見込まれます。

また、e-Tax invoice/receiptの導入には一定のIT投資が必要となりますが、2019年4月30日から12月31日までの投資支出に対する法人税上の優遇措置(追加での損金算入)を利用できます。

参考リンク

https://www.mazars.co.th/Home/Doing-Business-in-Thailand/Tax/Tax-deduction-on-e-tax-system-investments

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 (2019年11月作成)

 

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