会計論点解説 :投資と他の目的を有する不動産の会計処理

保有する不動産が複数の利用目的を有する場合におけるタイでの会計慣行を解説します。

設例

A社は、「TFRS for NPAEs」(タイ国非公開会社向け会計基準)を適用している。

2019年6月30日、A社は600万THBで建物を購入した。耐用年数は20年とする。

A社は建物の面積のうち60%を自社の事業に使用、40%を賃貸し、賃借料として2019年中に150万THBを受取った。

A社は、2019年12月期決算において、上記取引についてどのような会計処理をする必要があるか?

回答

 タイの日系企業が一般的に適用している会計基準「TFRS for NPAEs」(タイ国非公開会社向け会計基準)198項は、「投資不動産Investment property 」に関する会計処理について下記の通り定めています。

 

  • 投資不動産の定義

 投資不動産Investment propertyとは、「企業が、賃貸収入及び値上がり益のいずれか又はその両方を目的として保有(所有権又はファイナンスリースによる賃借を含む)する土地又は建物(一部所有を含む)」として定義されます。(これに対し、企業が自社の製造活動、サービス提供活動や管理活動に利用する目的で保有する不動産は、「自社利用不動産Owner-occupied property」、また、不動産販売事業用に棚卸資産として保有する不動産は 「販売用不動産Real estate for sale」として投資不動産とは区別されます。)

そのほか、投資不動産に含まれる場合として以下の例示が挙げられています。

-    長期投資用又は将来使用予定の土地

-    将来の利用目的が定まっていない土地

-    企業が所有又はファイナンスリースにより賃借している建物で、一つ又は複数のオペレーティングリースにより賃貸利用している建物

-    オペレーティングリースにより賃貸利用する予定で、現在は利用していない建物

-    将来投資目的で利用するために建設中の建物

  • 投資不動産の会計処理

 投資不動産は、1)将来の経済的利益が見込まれ、かつ2)取得原価が信頼を持って測定できる場合には、貸借対照表に資産として計上します。

 投資不動産の取得原価は、購入又は建設原価の他、専門家への相談料や輸送費、税金等の直接的な付随費用を含むものとされます。

 計上した投資不動産は、経済耐用年数に応じて減価償却の対象となり、また減損が認められる場合は減損処理を行う必要があります。

  • 投資以外の目的を含む不動産の取り扱い

 一つの不動産が、複数の利用目的を有する場合は、明確に目的ごとに区分可能であれば、その区分に従い会計処理も分けて行います。明確に区別できない場合は、自社利用目的及び販売目的部分が重要でないとされる場合に限り、全部を投資目的として計上します。

 

 上記を踏まえ、設例の取引の会計処理は以下の通りとなります。

A社は建物の取得原価の内、賃貸利用部分である40%相当額を投資不動産として貸借対照表に計上をする。従って240万THB(600THB ×40%)を投資不動産として計上する。また、20年間で減価償却する。賃貸料の150万THBは、2019年度の収入として計上する。

自社の事業に利用する部分である60%相当額にあたる360万THB(600万THB×60%)は、自社利用不動産として、投資不動産とは区別して貸借対照表に資産計上する。

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 (2019年7月作成)

 

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本記事は、作成日時点でのタイの法律等改正動向や一般的な解釈に関する情報提供を目的としております。内容については、正確性を期しておりますが、正確性を保証するものではなく、また作成後の法律改正等により最新の情報でない場合もあります。本記事の利用は、利用者の自身の判断責任となり、利用により生じたいかなるトラブルおよび損失、損害に対してMazarsは一切責任を負いません。個別の具体的な案件を進める場合には、事前に専門家へご相談頂きます様、お願い申し上げます。