法務論点解説 :利益剰余金のFBL事業用資本金への充当

タイでは、内資産業保護のため、外国人事業法(Foreign Business Act,1999 A.D.)により、一定の事業については外資企業(外国人の出資比率が50%以上の企業)の参入を禁止しています。しかしながら、外資企業が外国人事業委員会の承認の上、FBL(外国人事業ライセンス)得た場合はそれらの禁止事業を行う事が出来ます。

FBLの取得には、「資本金額が①3百万バーツ以上、または②申請する事業の3年間の支出予定額の1年分平均額の25%相当額、のいずれか大きい方以上であること」という資本金要件を満たす必要があります。この資本金は、FBLを申請する企業の登記国により以下のとおり定義されます。

  • タイ国内で登記された企業:株主からの資本金払込額
  • タイ国外で登記された企業(外国企業の支店、駐在員事務所等):事業用資金としてタイバーツ以外の通貨でタイ国内に送金した金額

よって、タイ国内でFBLを申請する外資企業は、原則として新たな資本投下が求められることになります。

しかしながら、「タイ国内での別事業で既に獲得した繰越利益剰余金」を上記の資本金としてカウントすることが商務省のルーリング(*)により認められています。

この特例を利用する場合は、FBL申請書にその旨の記載と、十分な利益剰余金を有していることが分かる財務諸表を商務省へ提出する必要があります。

一定の利益剰余金を有する外資企業が新規事業向けライセンスを検討する際に有用となります。

なお、卸売業や国際調達代理業は外国人事業法上の禁止事業とされますが、FBLとは別に、外国人事業法の特例により、当該事業用に資本金を1億バーツ以上有していれば、外資企業でも事業可能とされています(FBL取得は不要)。しかしながらこの「資本金1億バーツ」は、利益剰余金で充当することは出来ませんのでご留意ください。

*参考リンク(利益剰余金のFBL用資本金への充当に関する商務省ルーリング)

Rulings issued by the Foreign Business Administration Division in May 2013, November 2014, and December 2014.

     https://www.dbd.go.th/download/foreign_file/pdf/text5_3.pdf

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 (2019年10月作成)

 

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