会計論点解説:解雇補償手当に関する労働法改正に伴う引当金計上への影響

タイ労働法上、定年退職の場合も企業側の事由による解雇と看做され、定年退職者への解雇補償手当の支払いが必要となることから、企業は当該支出に対する退職給付引当金を計上することが会計上求められます。

2018年12月の労働法の一部改正により、解雇補償手当の支給レンジが以下の通り追加 されます。

項目

現行法

改正案

会社都合での解雇(定年含む)の際の法定解雇手当の支給額レンジ追加

下記5区分の勤務期間に応じて、法定解雇手当が算出され ます。

  • 120日~1年 -> 給与30日分
  • 1年~3年 -> 給与90日分
  • 3年~6年 -> 給与180日分
  • 6年~10年 -> 給与240日分
  • 10年以上 -> 給与300日分

※上記「給与」は解雇日の給与をベースとして計算されます。

1区分追加され、下記6区分の勤務期間に応じて、法定解雇手当が算出されます。

  • 120日~1年 -> 給与30日分
  • 1年~3年 -> 給与90日分
  • 3年~6年 -> 給与180日分
  • 6年~10年 -> 給与240日分
  • 10年~20年 -> 給与300日分
  • 20年以上 -> 給与400日分

※上記「給与」は解雇日の給与をベースとして計算されます。

 これに伴い、2018年度以前の勤務に起因する定年時の解雇補償手当相当額も変更される ため、退職給付引当金の計算を修正する必要があります。

 2019年2月にタイ会計士協会(FPA)は当該労働法改正に伴う退職給付引当金の修正対応に関するガイドラインを発表しました。

1)   TFRS(タイ国会計基準)を適用し、TAS19「Employee benefits」を適用している企業(主に公開企業)

  • 当該改正を含む利用可能な情報に基づいて、過去の勤務に起因する解雇補償手当相当額の見込みに変更がある場合は、2018年又は2019年度の損益計算書において変更額の全額を認識する。

2)   TFRS for NPAEs(タイ国非公開企業向け会計基準)を適用している企業

  • 企業は財務諸表作成時点の法律に基づき、従業員に対して法的な義務がある給付 について、将来想定される支出を「最適の方法」にて見積もり、当期の損益計算書においてに帰属する金額を認識する。

 TFRSを適用している会社は、2018年度又は2019年度に本改正の影響を損益認識する必要があります。またTFRS NPAEs適用会社については、本改正の影響を反映すべき具体的な年度は指定されていませんが「最善の方法」の過程において考慮する必要があり、直近で作成する年度決算への一定の調整が想定されます。

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 (2019年3月作成)

 

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