タイ税務改正動向:移転価格税制上の税務担当官の取引価格更正に関する通達

タイ税法には、2018年の改正により、関連会社間の取引において不当な利益移転があると税務当局が認める場合に、当該利益相当金額に対する法人税の追徴課税を行ういわゆる「移転価格税制」が定められています。ただし、税法では原則が記載され、適用にあたっての詳細な定義や手続き等は後に通達で定めることとなっていました。
 2020年11月に、移転価格税制の適用の詳細に関する通達の一部として、関連当事者間の取引価格がarm’s length(独立企業間取引の水準)より乖離しているとして税務担当官が
税金計算上の収入・費用の更正を行うことができる状況及び更正金額の算定方法を規定した歳入局通達Ministerial Regulation No. 369が公布されました。

本通達の概要は以下の通りです。

  • タイ税法71条の2に定める関連当事者(※1)に該当する企業間で「商取引または金融取引」を行っており、その取引価格・条件が独立企業間で行われる水準から乖離していることにより不当な利益移転が行われている場合、税務担当官の更正処分の対象となる。「商取引または金融取引」とは、書面合意の有無にかかわらず、広告やマーケティングを含むあらゆる商業的な目的で行われる商品やサービス提供、または資金貸借や金融支援、その他の金融活動を含む
  • 更正金額の算定は、以下の方法に従い算出される。

1. 取引当事者のいずれかが、更正処分の対象となる「商取引または金融取引」について、日常的に同種の取引を関連当事者以外の独立した第三者と行っている場合は、その第三者との取引における収入・費用を、更正金額の算定にあたり参考とする。

2. もし1.に該当する第三者との取引が無い場合、当該関連会社間以外の独立企業間で
行われている同種の取引における収入・費用を更正金額の算定にあたり参考とする。参考とする同種の取引がタイ国内か国外か、またタイ企業か外国企業により行われたものかを問わない。

  • 税務担当官により更正された収入・費用金額は、法人税、海外送金の際の源泉徴収税(税法70条)、利益送金税(税法70条の2)の課税所得の計算に利用される。

(※1) 関連当事者の定義(税法71条の2)

  • 直接または間接的に別の法人の総株式の50%以上を保有する法人
  • 総株式の50%以上が、他の法人の総株式の50%以上を直接的または間接的に保有している株主またはパートナーによって直接的または間接的に保有されている法人
  • 資本や管理の面で別の法人と依存関係にあり、一方の法人が他方から独立して運営できない法人

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(2020年12月作成)

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