タイ税務改正動向:移転価格税制に関する詳細規定のアップデート(独立企業間の取引水準の算定方法他)

2021年1月に歳入局は、移転価格税制の詳細規則・手続きを定めた通達the Notification of the Director-General of the Revenue Department, No. 400を発行しました。当通達では、主に1)「独立企業間の取引水準」の算定方法、2)サービス取引の適正要件、3)無形資産取引の分析に当り考慮すべき事項、4)移転価格に関する更正処分を起因とする取引相手側の税務調整、が規定されました。

それぞれの概要は以下の通りです。

1)「独立企業間取引の水準」の算定・検証方法

     移転価格税制 においては、企業とその関連会社間の取引価格が、支配・被支配の関係にない「独立企業間取引の水準」(arm’s lengthの水準)より乖離していると税務担当官が認める場合、税金計算上の当該取引に関わる収入・費用を「独立企業間取引の水準」に更正することが出来ます。当通達において、対象となる関連会社間取引の「独立企業間取引の水準」の算定・検証方法のガイドラインが定められました。企業が関連会社取引の合理性を検証する「移転価格文書」を作成する際も当通達に準じることが求められると考えます。

  • 移転価格税制における「独立企業間取引の水準」の算定・検証方法は、原則として以下A-Eのいずれを採用することとする。

A. 独立価格比準法 (Comparable Uncontrolled Price Method, CU法)–検証対象の関連会社取引と、他の独立企業間で行われている類似する取引(以下「比較対象取引」)の価格と直接比較する方法

B. 再販売価格基準法 (Resale Price Method, RP法)–検証対象の関連会社取引と比較対象取引の売上総利益率を比較する方法

C. 原価基準法 (Cost Plus Method、CP法)–製造原価に「適正な売上総利益」を加算することにより適正価格を算定・検証する方法

D. 取引単位営業利益法 (Transactional Net Margin Method, TNMM法)–個別の取引分類ではなく、検証対象の企業と、類似する他の独立企業の営業利益率を比較して、間接的に適正な取引価格を算定・検証する方法

E. 取引単位利益分割法 (Transactional Profit Split Method, PS法)–検証対象の取引の商流に関わる各企業間での利益配分の様態より取引価格を検証する方法

  • 算定方法の採用に当たっては、それぞれの手法の長所又は短所の比較、資産及びリスクを踏まえた対象企業の機能分析、必要情報の入手可能性・信頼性、比較可能性を考慮すること。
  • 上記A-E以外の比較方法を採用する場合は、A-Eの方法が適切でなく、採用する方法がより合理的であることの説明を添えて、事前に歳入局へ通知すること

2) サービス取引の適正要件

  検証対象となる関連会社間のサービス取引は、以下の要件を満たさない場合、「独立企業間取引の水準」と看做されません。

  • サービスが実際に提供されている
  • サービスの受け手が実際に便益を受けている
  • 同様の条件であれば第三者からのサービス提供でも対価を支払い得る状況である
  • サービス対価の価格が、第三者から提供の場合と近似している

3) 無形資産取引の検証に当り考慮すべき事項

    無形資産の利用取引の価格の検証にあたっては、無形資産の開発(Development)・改良(Enhancement)・維持(Maintenance)・保護(Protection)・活用(Exploitation)における取引各当事者間での役割分担、提供した資産、負担するリスクを考慮すること。

    無形資産の使用権、販売・譲渡取引に該当する場合、無形資産より期待される利益や無形資産の地理的有効性も考慮すること。

4) 移転価格に関する更正処分を起因とする取引相手側の税務調整

 税務担当官は関連当事者取引が独立企業間の取引水準より乖離していると判断する場合、税金計算を更正する権限を有します。また取引相手側の税金計算についても、対応する調整を行うことが出来ます。例えば、関連会社間での売買取引について、更正処分対象の販売企業の売上金額が増額更正された場合(その結果利益が増加し法人税の追徴課税がされる)、その相手側である仕入企業の購入価格も増額修正されることになります(その結果仕入企業の利益が減少し法人税も減額される)。

    この「取引相手側の税務調整」が行われる前提として以下の要件を満たす必要があります。

  • 税務担当官による更正処分が確定していること(税務裁判での確定を含む)。
  • 相手側企業が、税務調査に当り虚偽報告・隠蔽等を行っていないこと。

本通達は、2020年1月より開始する事業年度より適用されます。

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(2021年4月作成)

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