タイ税務改正動向 : 暗号通貨/デジタルトークンに関する個人所得税課税について

タイ税務当局は、暗号通貨・デジタルトークン(以下”仮想通貨”)から発生する利益に関する個人所得税の取り扱いについて、ガイドラインを発表しました。

当該ガイドラインでは以下のような点について述べられています。

1. 所得の種類・区分

2. 原価の選択―先入先出法(First-in, first-out method)もしくは移動平均法 (Moving average cost method)

3. 所得税計算のための、仮想通貨の価格の測定方法

当該ガイドラインは2021年の個人所得税申告のためのガイドラインであり、VATや源泉所得税については述べられていません。

このガイドラインにおいては、以下のような仮想通貨に関連する取引について述べられています。

1. 売買・譲渡・交換

2. マイニング(取引記録更新作業)

3. 給与等で仮想通貨を受領した場合

4. 贈与・褒賞・賞金として仮想通貨を受領した場合

5. 仮想通貨の保持により便益・対価が発生した場合

1. 仮想通貨の売買・譲渡・交換

1)所得の区分:仮想通貨の売買・譲渡・交換については、歳入法40条(4)に追加規定された (i) 項において課税の対象とされています。

2)原価の選択:売買・譲渡・交換された仮想通貨の原価については①先入先出法、もしくは②移動平均法の選択が可能です。一度選択した場合、年度内の取引については同様の方法をとって計算する必要があります。

3)所得と原価の計算における価格は、取得時の価格もしくは取得日の平均価格をもって算出します。

4)取引所で規定されている仮想通貨については、同年度内で他の種類の仮想通貨との損益通算が可能です。

5)年度末に保有している仮想通貨については、翌年以降の売却・交換等の原価として取り扱われるだけで個人所得税の対象ではありません。

6)個人所得税申告の際、源泉所得税があれば控除の対象となります。

2. マイニング(取引記録更新作業)

1)所得の区分:マイニングの際に取得した仮想通貨は取得時点では課税されません。取得した仮想通貨を売買・譲渡・交換した場合に、その仮想通貨のマイニングに要した費用を原価として、課税所得が計算されます。

2)上記の原価を算出するため、マイニングを行ったものはコンピューターメンテナンスコスト、従業員給与、手数料等の資料を保管しておかなければなりません。また、資産の減価償却もコストとして参入可能です。

3)原価の計算方法:売買・譲渡・交換の際と同じく、先入先出法と移動平均法の選択が可能です。

3. 給与等で仮想通貨を受領した場合

1)所得の区分:歳入法40条(1)の給与所得、もしくは40条(2)の報酬となります。

2)同様の雇用主から給与と報酬として受け取った場合には、給与(40条(1))として確定申告を行ないます。

3)受領時点で課税となり、申告する所得額は、仮想通貨受領価格もしくは受領日の平均参考価格を利用します。

4)受領した仮想通貨を売却・譲渡・交換する場合には受領時の申告価格が原価となります。

5)個人所得税申告の際、源泉所得税があれば控除の対象となります。

4. 贈与・褒賞・賞金として仮想通貨を受領した場合

1)所得の区分:歳入法40条(8)の贈与等に該当します。

2)受領時点で課税となり、申告する所得額は、仮想通貨受領価格もしくは受領日の平均参考価格を利用します。

3)受領した仮想通貨を売却・譲渡・交換する場合には受領時の申告価格が原価となります。

5. 仮想通貨の保持により便益・対価が発生した場合

1)所得の種類:歳入法40条(4)(h)項に規定されるデジタルトークンの利益もしくは、40条(8)のその他所得に分類されます。

2)便益発生の際に課税され、申告する所得額は、仮想通貨受領価格もしくは受領日の平均参考価格を利用します。

3)保持の対価として受領した仮想通貨を売却・譲渡・交換する場合には、受領時に申告した価格が原価となります。

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(2022年3月作成)

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本記事は、作成日時点でのタイの法律等改正動向や一般的な解釈に関する情報提供を目的としております。内容については、正確性を期しておりますが、正確性を保証するものではなく、また作成後の法律改正等により最新の情報でない場合もあります。本記事の利用は、利用者の自身の判断責任となり、利用により生じたいかなるトラブルおよび損失、損害に対してMazarsは一切責任を負いません。個別の具体的な案件を進める場合には、事前に専門家へご相談頂きます様、お願い申し上げます。