タイ税務改正動向 : 移転価格文書(ローカルファイル)の整備について

税法71条3項において、関連会社取引があり、売上高が2億バーツを超える会社は、決算期後150日以内に関連会社取引明細を整備する必要があり、税務当局はその取引明細の提出後5年以内に当該取引に関して“移転価格文書”の提出を会社に求めることができると規定されています。

2021年10月4日、税務当局は歳入局通達407号 (Notification of the Director-General of the Revenue Department on Income Tax No. 407) を発行し、移転価格文書 (ローカルファイル)の内容について詳細を規定しました。内容は以下のとおりです。

1. 対象会社に関する必要な情報や書類

(a) 会社の事業内容、組織図、従業員数、利益分析(バリューチェーン)、主要な仕入れ・取引先、競合企業、経営環境分析

(b) 関連会社との資本関係を含む関係の説明

(c) 関連会社との対象期およびその前期における取引の詳細と変化や事業戦略・資本再編等が対象企業の売上に与えた影響

(d) 対象期における関連会社との無形固定資産譲渡取引の内容と、売り上げへの影響

2.関連会社取引に関する情報や書類

(a) 関連会社取引の種類、相手先の所在(国や経済特区)、取引の価値

(b) 主要な関連会社取引のタイプの詳細説明と価格決定方式

(c) 上記(b)に関する契約書と価格決定方式を含むその概要

(d) 上記(b)の取引に関する、機能・資産およびリスク分析(Functions, Assets, and Risks (FAR) analysis)(*)とその前期との比較

(e) 上記(b)の取引価格決定に関連する財務数値情報

(f)  移転価格決定における上記(b)の取引に適用される移転価格方式

(g) 比較対象取引もしくは比較対象企業の詳細や財務情報。情報源や選定方法と適正レンジの算出方法

なお、下記に該当する場合は上記(g)の資料は必要ありません。

1). 以下の(a)-(d)の要件を全て満たす企業

(a) 売上高5億バーツ以下

(b) 関連会社取引の相手企業が企業で同じ所得税率が適用されている場合

(c) 国外企業との関連取引がない場合

(d) 対象期間において繰越欠損金を使用しておらず、また、相手企業も同様の状態であること

2). 対象企業が二国間事前確認制度を利用して当該取引について確認を得ている場合

なお、移転価格文書(ローカルファイル)はタイ語であることが要求されます。

(コメント)

今回の規定内容は、タイ語の言語指定が入った以外、一般的な移転価格文書の作成方法と大きく変わるところなく、混乱を招くものではないと思われます。利益分析の免除規定があるものの、日系企業ではこれに該当するところはないかと思われますので、関連会社取引があるところは今回の規定に沿って文書を準備することが必要になります。

(*)FARは機能リスク分析と訳されており、対象会社がグループ会社内でどのような資産を保有してどの様な役割を果たして、どういうリスクを負っているかを分析するものです。例えば、製造現地法人ですと、工場という資産を持って、製造という機能を担っている一方、対顧客販売リスクは負担していないというような形になります。

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(2021年11月作成)

 

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