タイ税務改正動向 : 在庫に関する税務上の論点

在庫に関しては、税務において様々な観点から留意をしなければなりません。特に在庫が過小(実在庫が帳簿記帳金額より少ない)であったり、毀損や減損、滅失等が発生したりした場合の取り扱いには注意が必要です。

以下では法人税とVATを中心に解説させていただきます。

1. 過小在庫(実在庫が帳簿金額より少ない)

1.1 法人税について

次に述べるVATの取り扱いとは異なり、法人税に関しては、実在庫が帳簿金額を下回っていたとしても、その差額分が既に販売されたものであるとして、売上に計上しなければならないという規定はありません。しかし、その帳簿金額と実在庫との差異について減損や損耗、消失、盗難等の明確な理由が無いばあい、法人税の計算においては売上として計上することが適切と考えられます。

1.2 VATについて

歳入法77/1(8)(e)により、実在庫が帳簿より少ない場合、その差額は商品販売とみなされ、VAT上の売上申告を行わなければなりません。この申告は差額が判明した時点で行うことが求められています。

  • VAT納付は過小在庫を認識した月に行わなければならない。ただし、VAT INVOICEは発行する必要がない。
  • 歳入法79/3(3)により、VAT売上の金額はその商品の市場価値による。

2. 在庫の損耗・毀損

2.1 法人税について

  • 在庫の損耗については、歳入法65 ter(1)による控除対象外費用として引き当てを計上します。この引当損失については法人税計算上加算項目となります。
  • なお、この損耗については、歳入局通達(No. Paw. 79/2541 (“D. I. Paw. 79”) に沿った形で処理が行われた場合にのみ、損失を確定して税法上控除が可能です。

2.2 VATについて

歳入局ルーリング(no. KorKhor 0706/308 dated 15 January 2008)によると、上記通達によって処理された在庫の損耗については、過小在庫とは異なり(*)売上VATを納付する必要はありません 。

(*損耗や毀損が発生した場合も、実在庫が帳簿金額を下回っている状態となっているため、こうした検討が必要となります。)

3. 在庫の盗難

3.1 法人税について

在庫の盗難について警察に報告を行い、また、盗難物が回収できないことが実証できて、保険で損失額を回収できなければ法人税法上の控除対象費用として計上可能です。

3.2 VATについて

法人税の場合とは異なり、上記1.2の損失の場合と同じ扱いとなり、VAT納付の義務が発生します。

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(2022年7月作成)

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