タイ法務改正動向:リモートワークに関する労働法の改正

本年3月、政府は現行労働法の一部改正が行われ4月18日から施行すると発表しました。これは、リモートワークに関する規定(23条1項)を新設するもので、以下概要を説明いたします。

1.リモートワーク形態の明確化

改正労働法では、職場以外での勤務という形態(リモートワーク)を明確化し、労働者の生活の質の向上と労働効率の改善に資するという意味で、自宅もしくは他の場所から、IT機器等を使って働くということを、雇用者と労働者の合意に基づいて導入できるとしています。

これは、改正前の労働法では職場で働くことが前提とされていましたが、COVID-19以降の労働形態の変化に合わせて、リモートワークを労働法の中にとりこむとともに、リモートワークにおける労働者の権利保護を行うという意図があるかと考えます。

2.リモートワークに関する雇用契約書

リモートワークを導入する場合にはそれに関しての雇用契約書を用意するとともに、その契約書には以下の項目を含んでいなければなりません。

  • 当該契約の始期と終期
  • 通常労働日・時間、休息、残業
  • 残業、休日、休暇に関する規定
  • 職務内容と雇用者の管理方法
  • 職務実施に関する機器や、その費用負担等に関する規定

また、リモートワークをする労働者と、職場で働く労働者は同一雇用条件でなければなりません。

3. リモートワーク時のつながらない権利” (Right to Refuse Communication)

改正労働法では、職務時間外や職務遂行時以外の “つながらない権利” についても明確化されています。これは、雇用契約で明示された就業時間や職務遂行時以外において、仕事上の電話・メールなどの一切の連絡を拒否できる権利のことをいいます。日本でも厚生労働省「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」等で明示されるようになっています。この権利の違反に関する罰則について労働法は明示していませんが、一方で就業時間外の命令に対して無視をした場合においても、解雇理由の一つである「雇用者からの命令の無視」にはあてはまらないことになります。

COVID-19時に在宅勤務を導入された企業様もあるかと思いますが、恒久的に導入する場合には、今回の改正も踏まえた、リモートワークに関する雇用契約・就業規則等の改定等も必要になります。

 

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(2023年4月作成)

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